コンセプト

ご挨拶

東大の樹.jpg 私達は、1990年代半ばに、吉武泰水先生と一緒に地域デザイン学を提案し、地域デザイン大学創りを試みていました。
 人間の生活を、その舞台である地域(場所)との係わりにおいて、より深く考え、見つめ直すことによって、地域社会(コミュニティ)の現代におけるあり方を、より良い方向にデザインすることが可能になるのではないかと期待しての試みでした。
 デザインとは「事物のあり方をより良い方向に進め、社会的に認知されること」だとすれば、「歴史は進歩する」という近代社会の揺るぎない確信が消失しつつある現代においても、なお、デザインの可能性を信じ、個人の価値観と社会共通の価値を結びつけていく足かがりとして地域(場所)が重要であると考えたためです。
 吉武先生も、自書『夢の場所、夢の建築』の中で次のように記されておられるように、場所の重要性を強く意識しておいででした。

 「なぜ夢には育った場所がよく現れるのか」
 「場所にかかわる記憶がよく保存されるのは人間の本能なのだ」
 「成長期の家や環境は、無意識の中でその一生を通じて新しく出会う場所に働き続ける」

 こうした模索の一環として吉武ゼミを続けてきましたが、百回を越えたのを契機に、この地域デザイン学の試みに新たな思いで取り組み、研究及び実践を通した普及の場として、この地域デザイン学研究所を創りました。
 小さな、小さな組織ですが、多くの皆様のご参加、ご支援のもとに、少しずつでも、着実な歩みを進めることができれば幸いです。

水野 統夫

地域デザイン学とは...




・「地域デザイン学」は、人間の生活の営みを、その営みが行われる場である「地域(場所)」を
 基盤として、従来の学問の枠組みや方法にとらわれることなく、研究しデザインする事を
 目指しています。

・ 複雑多様な人間の営みを研究するには、従来の分析的アプローチではなく、複雑なままで扱う
 総合的な方法が必要とされています。

図1・人間の営み.cwk (DR).pdf

・地域を舞台とする人間の営みをデザインするということは、そこでおこなわれる「活動」の質を高めることであり、現在の人間の営み(基層文化)を、より望ましい方向に進めて、新しい文化を創造することです。

図2・現在の人間の.cwk (DR).pdf

 ・人間の営みをより望ましい方向に進め、新しい文化を創造するための活動は、地域の主体である人間と、人間もその一部である自然との対応関係によって生まれる「事物」として表されます。なかでも、活動の基盤である「地域のしくみ(制度、サービス)」と「環境」との密接な関係をとらえることが必要です。
「地域デザイン学」は、これらの関係を追究します。

図3・自然.cwk (DR).pdf

・「事物」とは、慣習・ならわしのような基層文化から、催し・制度のような時間的存在としての「事」と、製品・施設のような空間的存在としての「物」の両者からなり、地域デザイン学は、「地域」をベースにして行われる「事物」のデザインを行います。特に「物」のデザインだけではなく、「事」のデザインが重視されます。

「地域デザイン学」は、地域における日常の活動の場を舞台として、これから新たに創りあげていく学問です。そのためにも、大学関係者をはじめとする専門家はもちろん、地域の行政関係者、文化活動・福祉活動にたずさわる方々、まちづくりやナショナルトラストなどのボランティア活動で汗を流されている人々などがこの学問づくりに参加されることを期待します。

 また、研究テーマについても、こんなテーマを採りあげたいとか、こうしたテーマの研究が必要であるとのご意見や、こういう研究をしているが、地域デザイン学にふさわしいので発表したいという方々の参加をお待ちしております。